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ミラノ・スカラ座 Teatro alla Scala

劇場データ

住所:Via dei Filodrammatici 2, Milano, 20121

開場:1778年

初演:"認められたエウローパ"(サリエリ作曲)

音楽監督:リッカルド・ムーティ

座席数:2,015席

URL:http://www.teatroallascala.org/

ミラノの街並み

オペラの殿堂として、あらゆる意味で世界一の劇場といえるであろうミラノスカラ座は、北イタリア最大の都市でロンバルディア州の州都、ミラノ市の中心にあります。皆さんもご存じかと思いますが、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロら数多くの天才を生んだイタリアは、芸術の国。単に芸術だけでなく、建物はもちろん、街中の看板や街灯ひとつをとってみても、実にお洒落でシンプルです。スカラ座の正面にはダ・ヴィンチの銅像のあるスカラ座広場を挟んで市庁舎があり、その横には100年以上前に造られたとは信じられないガレリアと呼ばれる壮大なアーケードがそびえます。ガレリアを抜ければ、そこは中世最大の教会ドゥオーモです。ゴシック建築の粋を集めたこの教会の中は、巨大な円柱が立ち並び、全面を覆っているステンドグラスも壮観です。少し歩けば、モンテ・ナポレオーネという、今やパリのシャンゼリゼ通りを凌ぐ高級ブティックが軒を並べるショッピング・ストリートが広がり、ミラノ・コレクションも世界最高峰といわれています。巨大な遺跡の町ローマや、中世の街並みが色濃く残るフィレンツェ、街中を運河が走る水の都ヴェネツィア、それぞれに特徴があって美しいのですが、伝統と最先端が同居しているミラノは、まさにアートの街なのかもしれません。

スカラ座の歴史

1778年の開場以来、222年もの歴史を刻んできました。その栄光の軌跡をたどるには、これまでスカラ座で初演された名作の数々を思い起こしてみれば簡単でしょう。主なものだけでも、ロッシーニの"イタリアのトルコ人"、"泥棒かささぎ"、ベッリーニの"ノルマ"、ヴェルディの"ナブッコ"、"オテロ"、"ファルスタッフ"、ボイトの"メフィストフェレ"、ポンキエッリの"ジョコンダ"、ジョルダーノの"アンドレア・シェニエ"、プッチーニの"蝶々夫人"、"トゥーランドット"……など、まさしくイタリア・オペラの歴史そのものです。ところで、スカラという名前は、ある女性の名前に由来しています。ミラノの名門ヴィスコンティ一族に嫁いだ、ヴェローナの貴族スカラ家のベアトリーチェ・デッラ・スカーラ。最初に彼女の名前がつけられたサンタ・マリア・デッラ・スカラ教会の跡地に建てられた劇場が、今のスカラ座というわけです。つまり名前だけを受け継いだのですね。ちなみにイタリア語でスカラ(Scala)というのは、はしごや階段という意味で、スカラ家の紋章もはしごの形をデザインしたものですが、今でもヴェローナ市の至るところで見ることができます。 

劇場

劇場の造りは、典型的な馬蹄形の劇場で、外観は何の変哲もありません。私も最初に訪れたときには少しがっかりしたような感覚をおぼえたことを思い出します。しかし、そんな落胆はすぐにかき消されました。一歩劇場内に入るとそこは別世界。全体が金箔とシックな赤で統一されていて、何ともいえない雰囲気を醸し出しています。天井からは約20フィートもの豪華なシャンデリアが下がり、まさに荘厳のひとこと。舞台の上には紅いビロードの緞帳が優雅な曲線を描き、15分刻みのクラシックな時計と赤十字の紋章(ミラノ市のシンボル)が客席を見守ります。余談ですが、真黒なスーツをシックに着こなした劇場のスタッフたちの胸にも赤い十字のブローチが輝いており、黒のスーツによくマッチして、ミラノが世界のファッション発信地であることを誇示しているようでとても素敵です。座席は、プラテア(平土間)の上に4層のパルコ(ボックス席)、その上に2層のガレリア(天井桟敷)となっています。5階・6階のガレリア席は、プラテア席やパルコ席の正面入口ではなく、正面左横の狭い階段を延々と登っていかなければなりませんが、正面の席さえ確保できれば、舞台の奥まで見下ろすことができます。また、音響も最高です。座席数は約2,000席ですので、決して小さくはありませんが、広い舞台の奥のほうからでも歌手の声は良く届き、奇蹟の空間を作りだしています。

素晴らしいのは劇場だけではありません。観客もまた素晴らしいのです。比較的やさしい(シビアではない)プラテアやパルコの観客ではなく、真剣にオペラを観に来ているガレリアの観客は、パルマのレッジョ劇場と並んで世界最高レベルの厳しさでしょう。歌手の調子が悪いときなど容赦はありません。どんなにビッグネームであろうとキツいブーイングの嵐です。また、ミラノっ子の趣味に合わない演出の場合にも、ブーイングです。目と耳の超えた観客ばかりですから、常に過去の名演と比較して、近代的な演出や歌手の出来などを批判するのも特徴です。もちろん、批判だけでなく賞賛の拍手も凄いものです。また、オーケストラの最後の音が完全に消えるまで(たとえpppやfffでも)、絶対に拍手を許さないあたり、観客全員がまるで打ち合わせをしたかのようです。慣れていない人や、本当に感動してしまった聴衆が先走った拍手をしようものなら、「シーッ!シーッ!」の大合唱で、そちらのほうがうるさいくらいなのです。

劇場のレベルは当然ながら文句なしです。中でも、特筆すべきは特にコロ(合唱)の上手さでしょうか。オケも1986年以来の長期政権を続けるマエストロ・ムーティの指導の下、最近は特に素晴らしい音楽を作りだし、たびたび単独の演奏会も開かれます。ムーティは、単にビッグネームの歌手だけでオペラを作ることなく、これと思った若手を起用する大胆なキャスティングを続けてきました。スカラ座から羽ばたいた新人歌手も枚挙にいとまがありません。こういう功績もスカラ座を賞賛する声のひとつだと思います。新人を発掘するだけでなく、世界中の歌手がスカラの舞台に上がる事を夢見ているといっても過言ではありません。私たちオペラファンもまたスカラ座でのオペラ鑑賞を夢みているといえるでしょう。でも残念なことに……。なお、劇場のオペラの内容が世界一なら、チケット取得の難易度も世界一なのです。一般売りとは名ばかりで、一般市民がチケットを額面どおりに購入できる可能性は、限りなくゼロ。本物のプラチナチケットといえるでしょう。

今後のスケジュール

スカラ座のシーズンはミラノの守護聖人・聖アンブロシウスの日の12月7日に開幕し、翌年の7月頃までで終了となります。通常は、7月中旬にスケジュールが発表されますが、このHPをご覧の皆さんに、こっそりと極秘情報をお教えします。来シーズン(2000-2001年シーズン)はスカラ座にも大変馴染みの深いヴェルディの没後100周年にあたるので、全11演目中、なんとヴェルディ作品が7演目を占めます。12月(オープニング)の"トロヴァトーレ"に始まり、2月の"リゴレット"、3月の"椿姫"、3~4月の"ファルスタッフ"、5月の"仮面舞踏会"、9月の"一日だけの王様"、10月の"マクベス"がそれです。海外からの豪華な客演も予定されていて、来年9月のウィーン国立歌劇場の"イエルサレム"、9~10月にはマリンスキー劇場の"運命の力"、11月にはミュンヘン・バイエルン国立歌劇場の"ルイザ・ミラー"と、まさにヴェルディ一色!ヴェルディ・ファンにとって、来年は絶対ミラノに行きたくなるシーズンでしょう。ヴェルディ以外にも、ベッリーニの"夢遊病の女"、ドニゼッティの"愛の妙薬"、プッチーニの"トゥーランドット"、ロッシーニの"チェネレントラ"とこちらもたいへん豪華です。なお、このシーズンの終了後、スカラ座は、改装工事のため数年間クローズする予定になっています。その意味でも行くなら今年がチャンスだといえるのです。  

オペラ・レポート

日時:2000年4月26日 20:00~

演目:ナクソス島のアリアドネ 新演出

作曲:リヒャルト・シュトラウス

指揮:ジュゼッペ・シノポリ

演出:ルカ・ロンコーニ

キャスト:
プロローグ:
作曲家・・・ゾフィー・コッホ
テノール・・・ジョン・ヴィラース
舞踏教師・・・フェルディナント・ザイラー
ツェルビネッタ・・・アレッサンドロ・スヴァブ
プリマドンナ・・・マリアナ・ズヴェコーヴァ 
オペラ:
アリアドネ・・・マリアナ・ズヴェコーヴァ
バッカス・・・ジョン・ヴィラース
ツェルビネッタ・・・キルステン・ブランク
ハルレキン・・・ステファン・ガンツ
スカラムッチョ・・・イアン・トンプソン
トルファルディン・・・サミ・ルッティネン
ブリゲッラ・・・クリストフ・ゲンツ


スカラ座では1984年にサヴァリッシュの指揮で、エヴァ・マルトンのアリアドネ、グルベローヴァのツェルビネッタという豪華キャストの公演以来、16年振りナクソス島のアリアドネとなりました。今回の公演は、当時と違ってビッグネームこそいませんでしたが、ドイツ人を中心に水準以上の歌手で固め、オケとコロのレベルの高さにも助けられ、まずまずの舞台となりました。

演出はスカラ座でもお馴染みですが、奇抜で斬新な舞台で毎度賛否両論を巻き起こす巨匠ルカ・ロンコーニの新演出でしたが、思いのほかノーマルな演出で、ちょっと拍子抜けでした。感心させられたのは、終幕の舞台全体を半分に割り、回転式の2面対称の島を作ったことです。ギリシャ神話組と道化組とのコントラストがとてもバランス良く表現されていて、特にフィナーレの2重唱がぐっと引き立ちました。歌手陣では、1幕の<プロローグ>しか登場しませんが、ズボン役の作曲家コッホが美しく良く通る声で、ひときわ光っていたように思います。

また、日本人にとってとても喜ばしいのは、昨シーズン頃から、プログラムのストーリーの解説に日本語によるページが加わったこと。現在は、イタリア語、フランス語、英語、ドイツ語、そして日本語の解説が入っていますので、直前の予習が可能となりました。

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