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ボローニャ・テアトロ・コムナーレ Teatro Comunale di Bologna

劇場データ

住所:Largo Respighi 1, Bologna 40126

開場:1763年

初演:"クレリアの勝利"(グルック作曲)

座席数:1034席

URL:http://www.comunalebologna.it/

ボローニャの街並み

広大なポー平野の最南端に位置するボローニャは、イタリア中北部エミリア=ロマーニャ州の州都です。ヨーロッパ最古のボローニャ大学が誕生したのは12世紀後半で、その後は文教都市として発展していきました。13世紀には1万人を超える学生を擁し、多くの学者たちがこの町から巣立っていきました。また古くからエミリア街道の要衝の地として、ミラノ・ヴェネツィア・フィレンツェの中間に位置し、さまざまな文化が自由に入ってきた歴史を持っています。現在の街並みは、14世紀の城壁に囲まれ、17~18世紀の館、宮殿が立ち並びます。ポー川流域のレンガを使用しているために、町全体が赤く、赤いボローニャとも呼ばれています。また、数多くの柱廊が道沿いに並び、厳しい風土の中、市民の憩いの場となっています。斜塔といえば隣州トスカーナのピサの斜塔がたいへん有名(54m)ですが、ボローニャの斜塔はなんとツインになっており、高いほうが97m、低いほうでも48mもあります。ただ唯一惜しまれますのは、大きな広場に建つピサの斜塔と違い、市街地の中心に建っていること。つまり斜塔全体を見渡すことができない点です。それが可能であれば、観光客向けの絵葉書などでも数多く取り上げられ、ピサの斜塔と同じくらい有名になっていたかもしれません。

テアトロ・コムナーレの歴史

テアトロ・コムナーレは、18世紀最大のオペラ作曲家グルック自身の指揮によって、1763年に開場しました。1820年からはメルカダンテ、ロッシーニ、ドニゼッティ、1843年からはヴェルディと、その当時、最も重要なイタリアの作曲家の作品が上演されてきました。1998年の来日公演でも豪華キャストによりフェドーラ、ドン・カルロ、ジャンニ・スキッキ、カヴァレリア・ルスティカーナで存在感を示しましたが、現在でもコーラスやオーケストラのレベルも非常に高く、イタリアを代表するオペラハウスとなっています。造りは古典的な馬蹄形で、非常に小さなプラテア(平土間)の上に4層のパルコ(ボックス席)、その上に1層のガレリア(天井桟敷)がそびえ、小さいながらも豪華な内装を誇っています。また、向かい合うワグナーとヴェルディのブロンズの浮き彫りが客席を見守っています。座席は1000席ほどしかなく、ほとんどが会員用の席ですので、スカラ座とは違った意味で、チケット取得の難易度が非常に高くなっています。音楽監督は、リッカルド・シャイーの後を受けた新進気鋭のダニエーレ・ガッティですが、スカラ座に次ぐ劇場という名声を立派に継承しています。 

オペラ・レポート

日時:2000年4月28日 20:30~

演目:人の声/パリアッチ(道化師)

作曲:フランシス・プーランク/ルッジェロ・レオンカヴァッロ

指揮:クリスティアン・バデア

演出:ジョルジョ・バルベリオ・コルセッティ(人の声) リリアーナ・カヴァーニ(パリアッチ)

キャスト:
<人の声>
人・・・ミレッラ・フレーニ

<パリアッチ>
ネッダ(劇中・コロンビーナ)・・・ダニエラ・デッシー
カニオ(劇中・パリアッチョ)・・・ホセ・クーラ
トニオ(劇中・タッデオ)・・・アルベルト・マストロマリーノ
ペッペ(劇中・アレッキーノ)・・・ワルター・ボーリン
シルヴィオ・・・ダリボー・ジェニス


<人の声>

まず、"人の声"はジャン・コクトーのリブレット(台本)をプーランクがオペラにしたもので、フランスの往年の名ソプラノ、ドニーズ・デュヴァルのために作曲されました。登場人物がただ1人で、舞台転換はまったくなく、それも主人公が電話を通して、ただ話をしているだけ、というとても特殊なオペラです。よほどの演技派のソプラノでないと、どうしようもない舞台になってしまいます。ストーリーは、男に捨てられた女が、愛し続けているその男と電話での会話の末、電話のコードを首に巻きつけて自殺する、というまったく救われない話です。ブルガリアの名花ライナ・カバイヴァンスカも当年とって65歳。もちろん声自体はやや衰えを見せるものの、その深い演技力は、電話のみという難しい設定の中で、心理描写や状況の説明を見事に表現し、万雷の拍手を1人占め(当たり前ですが…)にしていました。もちろん、フランス語の上演でしたが、イタリアには珍しく、舞台の上にイタリア語の字幕スーパーを入れたため、観客にも分かりやす、とても好評でした。

<パリアッチ>

一方、お馴染みの"パリアッチ"は、1998年のラヴェンナ・フェスティヴァルとカターニアのベッリーニ劇場、それにボローニャとの共同製作で、原作と同じくイタリア南部の田舎町の数十年前といった設定ですが、現在でも実際にこんな町があるのではと錯覚させる雰囲気です。ネッダ役のダニエラ・デッシーの歌唱は相変わらず安定していて、本当に色っぽいネッダでしたが、やや元気がなかったのが心配です。トニオ役のマストロマリーノは朗々とした良く通る声で、素材の大きさを感じさせ、ペッペ役のボーリンもペッペ役はもったいないほどの美声でした。シルヴィオ役のジェニスも高音のソット・ヴォーチェやピアノがやや詰まるものの、甘く良く鳴り通る声で、カンタービレを聞かせていました。さて今をときめくカニオ役のホセ・クーラです。相変わらずやや力任せの部分はありますが、太くてやや暗めの声ながら、高音はメタリックに輝き、抜群の存在感を示しました。ハイライトのアリア"衣装をつけろ"は、一本調子で迫力に任せて歌いきってしまったという印象もありましたが、彼一流の計算で、モナコのように激しく泣きを入れた歌い方を嫌い、あくまでもクールに、もっとシンプルに演じたのかもしれません。カニオの衣装は、田舎の青年という感じで、とても道化師には見えませんでしたが、容姿的にも大柄でがっちりとした体格なので、カニオ役にはぴったりという印象でした。それにしてもクーラは、まだまだ発展途上にあるという感じで、大器ぶりを見せつけられました。終演後、楽屋口にもファンが詰めかけ、イタリアでも凄い人気でした。合唱やオーケストラもルーマニア人の指揮者クリスティアン・バデアの完璧に計算された指揮に良く付いていき、オペラハウス全体のレベルの高さを示していました。

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