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ザルツブルク祝祭大劇場 Grosses Festspielhaus, Salzburg

劇場データ

住所:Grosses Festepielhaus, A-5020 Hofstallgasse 1, Salzburg

開場:1960年

初演:"バラの騎士"(リヒャルト・シュトラウス作曲)

芸術監督:ジェラール・モルティエ(~01シーズン) ペーター・ルジツカ(02シーズン~)

座席数:2371席

URL:http://www.salzburgerfestspiele.at/

ザルツブルクの街並み

モーツァルトの街、ザルツブルク。中世の街並みが色濃く残る街、映画「サウンドオブミュージック」の舞台。そして現在は、質量ともに世界一の音楽祭、ザルツブルク音楽祭として知られています。この美しいバロックの街は、ローマ時代から岩塩の集散地として栄え、中世には、ローマ法王の直轄地の大司教領として、カトリックの北の中心地でした。そんな中、1756年1月27日に生まれたのが、天才ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトです。モーツァルトの研究機関、兼音楽大学のモーツァルテウムもここザルツブルクにあります。 現在も山に囲まれた小さな町ながら、市内の真ん中をザルツァッハ川が流れ、旧市街はバロックの教会等が建ち並ぶ非常に美しい街並み。街の東はザルツカンマーグートという湖水地方が広がり、南はヨーロッパアルプスの峰々がそびえます。おもちゃ箱をひっくり返したような美しい街並みに大自然が融合するザルツブルクはヨーロッパ有数の景勝地です。20世紀の帝王、大指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンの生まれた町としても知られています。

ザルツブルク音楽祭の歴史

ザルツブルク最初の音楽祭は、モーツァルト音楽祭として1842年に開催され、1856年にはモーツァルトの生誕100年祭が行われました。1877年には、モーツァルテウムがウィーンフィルを呼んで、近代的な音楽祭が始まりました。ウィーンフィルにとっては、初めてウィーン以外でのコンサートと記録されています。その後、第1次世界大戦勃発で中止となりましたが、1920年演出家のマックス・ラインハルトによって現在のザルツブルク音楽祭がスタートしました。同年は演劇の「イエーダーマン」だけでしたが、翌年にはコンサート、翌々年の1922年にはリヒャルト・シュトラウス率いるウィーンフィルによってオペラの上演始まりました。その後、トスカニーニ、フルトヴェングラー、クラウス、ワルター、クライバー、クナッパーツブッシュ、ワインガルトナー、更には若き日のベームら超一流の指揮者達、そしてウィーンフィルとウィーン国立歌劇場によって素晴らしい成功を収めてきました。第2次世界大戦後、1947年にはフルトヴェングラーやベームが復帰し、再び隆盛を取り戻します。そして、1956年には地元出身のヘルベルト・フォン・カラヤンが指揮者と演出家を兼ねて本格的に参加し始めます。1960年には祝祭大劇場が開場します。こけら落しの演目は、音楽祭創設メンバーの1人シュトラウスの「バラの騎士」。その後も世界中の一流歌手を一同に集め、更には1967年からベルリンフィルによるイースター(復活祭)音楽祭が始まり、文字通り世界一の音楽祭へと発展を遂げます。1988年にカラヤンが辞任、翌年亡くなると、ショルティ、アッバードが暫定的にあとを引継ぎ、1992年にはベルギー人の敏腕プロデューサー、ジェラール・モルティエが芸術監督に就任。毎年統一のテーマを決め、演出は演劇性を重んじモダン路線を打ち出します。新人の積極的な発掘、更には20世紀の作品の再評価と、新しい音楽祭へと劇的な変貌を遂げて行きました。しかし、世界一の音楽祭としての名声はいささかも揺るいでいません。2002年からはペーター・ルジツカが総監督に就任し、ますますの発展が期待されます。 

ザルツブルク音楽祭の種類

現在、ザルツブルクには4つの音楽祭があります。

まず、モーツァルトの誕生日1月27日の前後10日間に渡って開かれるMozart Woche(モーツァルト生誕週間)、これはモーツァルテウムや祝祭大劇場を中心に行われ、もちろんほとんどがモーツァルトの作品となりますが、アルフレード・ブレンデルほか、超一流アーティスト達も毎年出演します。

次に、復活祭(イースター)のころ、3月下旬から4月上旬に開かれるのが、Osterfestspiele Salzburg(復活祭音楽祭)で、全ての演目をベルリンフィルが演奏し、例年オペラが1演目、オーケストラコンサートが数回というプログラムになります。1994年からはクラウディオ・アッバードがタクトを振っていましたが、2003年からはサイモン・ラトルに交代します。

3つめは1998年から始まった新しい音楽祭で、5月中旬のBarock Pfingstfestspiele(バロック聖霊降臨祭)。ヘンデル、グルック、ラモー、バッハ等、バロック大作曲家の諸作品のフェスティバルという珍しいもので、例年6~7作品が上演されます。

最後は7月下旬から8月末まで40日間にも渡るSalzburg Festspiele(ザルツブルク夏の音楽祭)です。ウィーンフィルを中心にベルリンフィル、それ以外にも世界中の一流オーケストラが毎夜のようにゲスト出演をします。例年7~10本のオペラ、数多くのコンサート、リサイタル等々、世界中の音楽ファンを一同に集め、華麗なる真夏の夜の夢が繰り広げられます。

劇場

ザルツブルクには幾つかの主要な劇場があります。

まず、表題にあるGrosses Festspielhaus(祝祭大劇場)ですが、前述の通り1960年開場の大劇場で、各音楽祭でのメイン開場となっています。メンヒスベルクという裏山を爆破してステージを作ったスケールの大きな劇場は、クレメンス・ホルツマイスターの設計によります。客席は1階、2階とも横に広く、ヨーロッパ屈指の大きさを誇りますが、段差があってどこの席からでも舞台が良く見えます。音響もかなり良く、間口30mのステージは壮観のひとこと。

次に祝祭大劇場と隣接したKleines Festspielhaus(祝祭小劇場)ですが、1927年にベートーヴェンの没後100周年にちなみ、「フィデリオ」で開幕。祝祭大劇場の開場まではメイン会場となっていましたが、1963年に現在の形に改築されました。現在は、座席数1324席で、御茶ノ水のカザルスホールのような縦長の劇場です。モーツァルトの「コシ・ファン・トゥッテ」のように規模の小さなオペラが上演されます。

3つめはFelsenreitschule(フェルゼンライトシューレ)です。意味はFelsen(岩壁)、Reitschule(馬術学校)の通り、馬術学校の裏の岩肌を削って作った劇場で、岩に囲まれたたいへん珍しい劇場です。1925年より馬術学校を改築してホールとして使い始め、1970年にホルツマイスターの設計で現在の座席数1549席の劇場となりました。可動式のオープンエアなので、通常とは趣向の変わった演出が可能です。ステージ後ろの3層のアーチを数多い小部屋に見立てた演出も良く見うけます。最近では、全体をテント小屋に見立てた「魔笛」も話題を呼びました。以上の3劇場は、隣接した同じ建物内にあります。

4つめはGrosses Saal des Mozarteums(モーツァルテウム大ホール)で、モーツァルテウム財団の中にあるコンサート用のホールです。1914年に建てられたホールで、座席数は807席。モーツァルテウム管弦楽団はもちろんのこと、弦楽四重奏団等、室内楽のコンサートが開かれます。夏の音楽祭では、モーツァルテウム管弦楽団によるモーツァルト・マチネというマチネのコンサートが呼び物の1つとなっています。

5つめはLandestheater(州立劇場)で1775年に宮廷劇場として建てられた伝統のある劇場です。1893年に大改築されモーツァルトの「皇帝ティトの慈悲」で開場されました。祝祭小劇場が出来る前は、音楽祭のメイン開場でしたが、現在、音楽祭期間中は、小さなオペラ、演劇などが上演されます。座席数は732席で、音楽祭期間中以外にも定期的に公演があり、オペラ、オペレッタ、演劇、ミュージカルなどが上演されています。

あとは、Domplatz(ドーム広場)という大聖堂の前の野外ステージと客席で演劇「イエーダーマン」を、そしてResidenzhof(レジデンツホフ)という大司教の館の中庭に野外ステージを組んで屋根を被せた会場では小さなオペラやバロックオペラを、そのほかにもいろいろなところで、さまざまな演目が上演されています。  

オペラ・レポート

日時:2001年8月23日 18:00~

演目:ドン・カルロ

作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ

指揮:ロリン・マゼル

演出:ヘルベルト・ヴェルニケ

キャスト:
フィリッポⅡ世・・・フェルッチョ・フルラネット
ドン・カルロ・・・ ニール・シコフ
ロドリーゴ・・・トーマス・ハンプソン
宗教裁判長・・・アナトリ・コチェルガ
修道士(先帝カルロⅤ世): フランツ-ヨーゼフ・ゼリック
エリザベッタ・・・マリアナ・メシェリアコーヴァ
エボリ公女・・・オリガ・ボロディナ 


このオペラは、1867年にパリ・オペラ座で初演されたフランス語による5幕版のオペラ「ドン・カルロス」に手を加え、イタリア語の4幕版の改訂版として1884年にミラノ・スカラ座で初演されたものです。1998年、1999年に上演されたものの再演ですが、主要メンバーで3回とも同じなのは指揮のマゼル、エリザベッタのメシェリアコーヴァの2人だけで、今回もまた新鮮な演奏が聞けました。今年の1番の特徴は、98年、99年と同じコンビだったドン・カルロのセルゲイ・ラーリンとロドリーゴのカルロス・アルヴァレスから、シコフ、ハンプソンへと替わったことです。シコフはニューヨーク生まれの52歳。世界中の一流歌劇場で活躍を続けていますが、ちょっと精神的に弱いドン・カルロ役はまさに適役で、声も実に堂々として、アクートの効いたスピントな声を劇場中に響かせていました。ハンプソンはアメリカ人で46歳。世界中で説明の要らないほどの活躍を見せていますが、正義と友情の人ロドリーゴを実に朗々と、しかも正確に歌い上げ、まさしく現代最高のロドリーゴを聞かせてくれました。フィリッポⅡ世は99年と同じフルラネットでしたが、貫禄充分で細やかな表現も抜群に上手く、この3人の男性陣はまさに世界最強。もちろんメシェリアコーヴァ、ボロディナらも大変素晴らしく、素晴らしい声の競演となりました。マゼル率いるウィーンフィルも気合の入った演奏で、ダイナミックなヴェルディのオーケストレーションを迫力満点で聞かせてくれました。特に金管とホルンの鳴り方は尋常ではなく、何度も鳥肌が立つほどでした。

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