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パレルモ・マッシモ Teatro Massimo di Parelmo

劇場データ

住所:Piazza G. Verdi 90138, Palermo

開場:1897年

初演:"ファルスタッフ"(ヴェルディ作曲)

音楽監督:サンドロ・トランキーナ

座席数:1316席

URL:http://www.teatromassimo.it/

パレルモの街並み

地中海最大のシチリア島、シチリア州の州都で最大の都市パレルモは、かつて文豪ゲーテに「世界一美しいイスラムの町」と称えられました。昔から地中海の統治権を巡って、多種多様の民族の支配を受けましたが、フェニキア、ローマ、ゲルマン、ビザンチン、アラブ、ノルマン、アラゴン、ブルボンとヨーロッパの歴史そのものの感があります。特に栄えたのは11世紀、ノルマン王朝のルッジェーロ2世のころで、イスラムのビザンチン建築様式にノルマン様式をうまくミックスさせ、現在でもいたるところで、このアラブ・ノルマン様式による世界遺産を見ることができます。特に有名なものとしては、ノルマン王宮内パラティーナ礼拝堂の黄金のモザイクや、サン・ジョヴァンニ・デリ・エレミティ教会の回廊です。また、パレルモから南西8kmにある山の中腹の近郊都市モンレアーレは、ぜひ行きたいところ。ここのドゥオーモにある青銅の扉や絢爛たるモザイクは、息を飲む美しさで一見の価値があります。ヴェルディの「シチリア島の夕べの祈り」でも有名な"シチリア島の晩鐘事件"は1282年当時のフランス支配に対しての一斉蜂起の実話で、パレルモが舞台です。また、シチリアといえばゴッドファーザー、マフィアの故郷ですが、イタリア政府の徹底的なローラー作戦によって、大物マフィアはほとんど牢獄に入っているらしく、めっきり静かです。その影響もあってか市内の治安はとてもよく、イタリア本土よりも安全なほどです。地中海の魚介類を中心に、料理もたいへん美味しく、パレルモ風おにぎりとも言えるアランチーネも病みつきになります。

マッシモ劇場の歴史

マッシモ劇場は、20年以上かけた大工事ののち、1897年5月16日にヴェルディの「ファルスタッフ」で南イタリア最大のオペラハウスとして大々的に開場しました。同年同月にはイタリアが生んだ大テノール、エンリコ・カルーソーがポンキエッリの「ジョコンダ」でデビューするなど、100年以上の輝かしい歴史を誇っています。特に新人の発掘には定評があり、多くの有望な歌手、指揮者たちがマッシモ劇場から巣立っていきました。しかし、老朽化が進んだため1974年に改装(一時閉鎖)され、その後はすぐ近くのポリテアーマ劇場(1874年開場)にて公演が行なわれてきました。1988年にはオープンするだろうと言われていましたが、例によって工事が遅々として進まず、結局100周年の1997年にも間に合いませんでした。

1998年4月22日、24年にも及ぶ工事がようやく終了し(実際には工事が完全には終了せず、いたるところが工事中のまま、無理やり開演させましたが)、アンジェロ・カンポーリの指揮、ノルマ・ファンティーニのアイーダ、ホセ・クーラのラダメスによるヴェルディの「アイーダ」で24年ぶりに再オープンしました。当初、パヴァロッティのラダメスが話題を集めていましたが、急遽、クーラに変更になったのも、シチリアらしいかもしれません。

劇場

劇場入口の手前左右にライオンの銅像が鎮座し、そこから30段ほどの階段を上がったところにギリシャ神殿コリントス式、やや中膨れになった大石柱(サゴーマ)が立ち並び、荘厳な雰囲気で我々を出迎えてくれます。この配置は、ミュンヘンのバイエルン国立歌劇場の正面ととてもよく似た感じです。しかし一歩中に入れば、オープンスペースはとてもゆったりとして、近代的で美しく、贅沢な空間です。新しい劇場も馬蹄形の劇場で、プラテア(平土間)の上に5層のパルコ(ボックス席)、その上に1層のガレリア(天井桟敷)という堂々とした作りです。ワインレッドの座席に、壁はすべて金箔で、たいへんな美しさです。また、天井には大きな円形の美しいフレスコ画が金箔に映えています。

Massimoというのは英語のMaximumと同意で、最大ということですので、建物自体も、とても大きいですが、イタリアで5番目に大きな劇場と言われています。しかし、大きいながら音響も素晴らしく、間違いなくヨーロッパを代表する歌劇場の1つといえます。また、劇場内のギフト・ショップもプログラムのバックナンバーやいろいろな小物が売っていて休憩中に楽しめます。座席数は改装前には、3,200席とか3,600席と言われていましたが、現在はどう数えてみても1,200~300席しかなく、果たしてこれで採算が取れるのかと心配になってしまうほどです。

オペラ・レポート

日時:2000年5月2日 18:30~

演目:ウェルテル

作曲:ジュール=マスネ

指揮:レイナルド・ジョヴァニネッティ

演出:ベニ・モントレザー

キャスト:
ウェルテル・・・ヴィンチェンツォ・ラ・スコラ
シャルロッテ・・・ソニア・ガナッシ
アルベルト・・・エンリコ・マルッチ
シュミット・・・リッカルド・ボッタ
ヨハン・・・ジョヴァンニ・ベッラヴィア
大法官・・・アレッサンドロ・スヴァブ
ソフィー・・・ジョヴァンナ・マンチ 


当然のことながら、文豪ゲーテの"若きウェルテルの悩み"を原作とするこのオペラは、マスネにとって"マノン"を凌ぐ代表作で、ひたすらに甘美な旋律が心に染みとおります。原作にはないクリスマスに向けて、という設定が実に良く、ストーリーは破滅の日(クリスマス)に向かって進んでいきます。このプロダクションはジェノヴァのカルロ・フェリーチェ劇場との共同制作でしたが、演出のモントレザーにとっては2度目のウェルテルとなりました。第3幕のシャルロットのひざ掛けか何かわからない巨大のスカートを広げて編物をしているというシーンは意味が不明でしたが、おおむねスタンダードな演出で、シンプルで美しい舞台でした。 また、フランス語上演のためイタリア語の字幕も出て、わかりやすく好評だったようです。さて、日本でもおなじみウェルテル役のテノール、ヴィンツェンツォ・ラ・スコラですが、地元パレルモ出身で、ちょっと頼りない根暗な青年役をやらせたら天下一品。最近には珍しい正統派のベル・カント歌手で大喝采を浴びていました。シャルロッテ役のソニア・ガナッシは、最近めきめき売り出し中の美貌のメゾ・ソプラノで、十八番の"セヴィリアの理髪師"のロジーナもいいですが、最初は清楚で、その後悩み、最後は激情に走るシャルロッテもとても良かったと思います。まだ30代前半なので、今後の活躍がますます楽しみです。他では脇役になりますが、シュミット役の若手テノール、リッカルド・ボッタのリリックな発声がとてもよく、まだ28歳ということなので、次はぜひ主役を聞いてみたい気がします。オケやコロのレベルも高く、最近停滞ぎみのローマのオペラ座やナポリのサン・カルロ劇場などよりは遥かに上質な音楽を聞かせてくれて、南イタリアナンバーワンの劇場という印象を強く受けました。

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